移民の社会統合 −同じ社会の構成員として 2006年7月
−移住と開発に関するハイレベル討議に向けて Vol.4−

アメリカに定住するベトナム難民へのオリエンテーション
©IOM 2005 - MPH0016. Photo by Darell Sison

「移民社会」という言葉には、「諸民族の融合した社会」と「諸民族の寄り合い所帯」というイメージが入り混じっているようです。もちろんこの二つのイメージは必ずしも矛盾したものではありません。多くの場合、移民とその子孫は長期にわたって一定の民族的、文化的、宗教的な独自性を維持しながら、同時に受け入れ社会の一員としての地位を築き上げていきます。移民の受け入れ社会への帰属意識は、その時々の政治的状況や社会的な公平感(不公平感)によって大きく左右され、移民の間に疎外感が広まると、その反動から文化的摩擦が高まる傾向が見られます。

近年、移住政策をめぐる議論の中で「移民の社会統合」(Migrant Integration)に関心が集まっています。これは、従来の「融合か、多文化主義か」といった単純化したモデルを離れ、受け入れ社会と移民の双方がお互いの独自性と多様性を尊重しつつ、同じ社会の構成員としての共有文化を築き上げていく過程を指しています。その背景としては、移住形態の多様化に伴い、永住移民とは異なる有期滞在の移住労働者らが増加し、移民の受入国も湾岸諸国、西ヨーロッパ、東アジア地域へと広がっていることが挙げられます。日本でも1990年代以降、日系ブラジル人など「ニューカマー」と呼ばれる外国人労働者とその家族が急増していますが、これは世界的な規模で起きている人の移動の多様化を反映したものと言えるでしょう。

移民の社会統合を進めるには、雇用の安定、言語の習得、社会保険の適用を促進する施策が欠かせません。例えば、2004年に新移民法を制定したドイツでは、全ての長期滞在者(1年以上の滞在許可を得ているか、または18ヶ月以上前から滞在許可を有している人たち)を対象に統合コースを実施しています。このコースでは、ドイツ語教育に加えて、ドイツの法律、文化、歴史などを学ぶオリエンテーションが行われています。

今年3月に外務省とIOMの共催シンポジウムに参加したリタ・ジュースムート元ドイツ連邦議会議長の以下の発言は示唆に富んでいます。

「ドイツには、多文化的、マルチカルチャーという考え方、すなわち共に異なった文化が共存しているという考え方が根づいていません。ほとんどの人は、相手の文化のことを何も知らないのではないかと指摘されるようになってきています…単に(移民に)言葉を身につける学習の機会や、ドイツの歴史について学習する機会を提供するだけでなく、私たちがイスラムの文化について学ぶことも必要なのです。学習のプロセスにおいては、グローバルな取り組みが必要です。」

IOMはこのような各国の経験を基に、多様化する移住形態に対応する社会統合のあり方を検討する「移民と受け入れ社会」と題したワークショップを、今年7月12-13日にジュネーブで開催しました。このワークショップには、カナダ、ポルトガル、韓国、日本といった新旧の移民(短期・中期滞在の労働移民を含む)受入国の政府機関、国際機関、移民コミュニティーの代表らが集まり、多角的な視点から移民の社会統合の現状と課題を議論しました。
ワークショップ詳細→

また、日本の社会統合に関する最新の資料としては、下記のページも合わせてご覧下さい。
2006年3月 IOM・外務省共催シンポジウム「外国人問題にどう対処すべきか− 外国人の日本社会への統合に向けての模索 −」→

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