■スマトラ沖地震及び津波被災者支援ニュースNo.26 2005年12月26日■

- Special Issue -

スマトラ沖地震・津波から一年



IOMは、日本国政府などの資金提供を受け、主にインドネシアとスリランカの被災者に対する支援活動を、災害直後から続けています。援助物資の輸送・配布、仮設住居の提供、被災者の登録、人身取引(トラフィッキング)対策、医療支援 の分野で活動しています。

災害は人々の平穏な生活を一瞬で奪いました。IOMは災害直後、生活必需品や医療サービスの提供などの支援を行っていましたが、復興の兆しの見え始めた現在は、コミュニティの再生と被災者の自立を目指した活動を行っています。



IOMスマトラ沖地震・津波被災者支援 2004.12 - 2005.12


スリランカでは津波により、50万人以上の人々が家を失い、40万人が生きる術を失いました。IOMは災害前から設置されていた地域事務所を通じて、被災した13県で支援活動を行っています。現在は、仮設住居の提供、人身取引対策、心のケア、医療支援、被災者の登録などの活動を実施しています。

仮設住居の提供

災害直後は、緊急的な仮設住居の建設やテントの提供などを行いました。現在は恒久的な住居が建設されるまでの約2〜4年間使用できる仮設住居を建設しています。11月末までに7つの県で4,670戸が完成しました。同時に、井戸、貯水槽、トイレ、シャワー、排水設備などを設置して、地域の水衛生を守っています。

住居は可能な限り入居予定者の土地に建て、地域センターなどの施設も近くに建設し、コミュニティの一日も早い復興に努めています。


被災者の登録

これまでに、被災者キャンプでの6,550世帯の登録、7,000世帯を対象とした生計手段の回復支援に関する調査、その他32,773世帯の登録を実施しました。現在は大統領府との協力で、20万世帯100万人の被災者を対象とした登録(調査)を進めています。すでに13県に情報管理センターを設置しています。

人身取引対策

ポスターやパンフレットの配布、ワークショップの開催により、人身取引の被害に遭う危険性の高い、子ども、女性を重視した啓発活動を11月末までに35,000人以上を対象に実施しました。

また、イベントの開催や、幼稚園教師・医療スタッフ・政府機関職員・地元NGOスタッフへの研修などを通じて、約30,000人の被災者を対象に心のケアを目的とした活動を実施しました。

2,621世帯に対する生計手段の回復支援のうち、特に片親世帯や生活が困窮している394世帯を日本の支援対象として、人身取引対策の一環で災害で失った商売道具や各種トレーニングを提供しました。


援助物資の輸送

災害直後から11月までに、国際機関、各国政府援助機関、NGOに対しトラック3,500台分の輸送サービスを無償で提供しました。

花に囲まれた暮らしをもう一度

コロンボから北へ40kmのガンパハ県ニゴンボ地区で、ガーデニングコンテストが開催されました。IOMが建設した仮設住居で暮らす人々が参加しました。地域の復興が緒についた今、自分たちのコミュニティにもっと誇りを持ってほしいというIOM現場職員の願いから実現しました。

コンテストにより仮設住居が花で飾られ、不要なものが片付けられました。この地区には120世帯が暮らしていますが、実に80%以上が小さな庭を作ったのです。

参加者の一人サンパス(24歳)の家には、津波の前には素晴らしい庭があったといいます。「首まで水につかりました。泳いで何とか助かったものの、大きな波が僕の家と庭を飲み込むのが見えました。」サンパスは腎臓を患っていますが、張り切って庭を作りました。丹精込めて手入れした植物と、清潔な空間が評価されて、サンパスは賞を取りました。賞品は高級蚊帳です。他の参加者にも、野菜の種が参加賞として贈られました。

コンテストは地域の美観に貢献しただけでなく、人々が自身のコミュニティに対する責任を再確認する貴重な機会となりました。

スリランカ・ガンパハ県
サンパスと自慢の庭 ©IOM 2005
スリランカ・ガンパハ県
花に囲まれる子どもたち ©IOM 2005


2004年12月26日の地震と津波はアチェの風景を一変させました。16万人の人々の命を奪い、50万人以上の人々の家を流し去りました。IOMはスマトラ島北部(主にアチェ州)において、災害前からの活動を拡大して支援を開始し、現在も継続しています。3月28日にスマトラ島西岸沖で発生した地震にも対応し、ニアス島・シムルエ島でも支援活動を行っています。

仮設住居の提供

アチェ州全体で11,000戸の建設を予定しています。12月までに約1,300戸が完成し、約6,500人の被災者に新しい住み処を提供しました。他にほぼ同数が建設中です。IOMの仮設住居は、セメントなどを原料とした板のパーツを組み合わせて建設するもので、建設地での作業を最低限に抑えることができます。容易に分解と組み立てができ、恒久的な住居を建設する際の材料の一部としても使用できます。広さ36平方bの耐震構造で、数年の使用が可能です。

仮設住居の他にも、UNICEFとの協力で仮設校舎を183棟建設しました。また、ニアス島とシムルエ島の市場で737軒の店舗を再建して、地元の小売業者に提供しました。

IOMの建設事業は、ロクスマウェからバンダアチェ、バンダアチェからムラボーに至る600kmのスマトラ島沿岸で実施されており、7,000人以上のアチェの被災者に雇用機会を提供しています。

医療・保健支援

災害直後には、被災者の治療や重症患者の適切な医療施設への照会と移送を行いました。

2005年12月初めには、保健省からの要請で行った、仮設住居など被災者の居住区に隣接した診療所37ヶ所の建設を、アチェ州7県で完了しました。周辺住民45,000人を対象に、地域の保健事務所が運営を開始しています。うち日本の支援で17ヶ所を建設しました。医師や助産師など医療関係者300名に、トレーニングも提供しました。

今後は、被害を受けた医療施設の修理や改築を続けます。

人身取引対策

人身取引の被害に遭う危険性が高い社会的弱者としての、子どもと女性を重視して活動しています。

IOMは3,400世帯を対象に生計手段の回復支援を行いましたが、配偶者をなくして一家の稼ぎ手となった特に困難な生活を送る女性を、人身取引対策の一環として支援しています。11月末までに、女性423名に対し、家畜の飼育や加工食品の生産、縫製等のトレーニングと道具を提供しました。うち279名は日本の支援です。

啓発活動として、カレンダーやポスターなどを7種類作成して配布しました。IOMが主催したトレーニングを受けた地域のリーダー、教師、NGO職員などがアチェ州全域で活動しています。また、公共広告をアチェのラジオ局などと提携して作成し放送しました。

その他、制服5,500着を始め、自転車、机、靴、靴下の提供や、バスの運行を通じて子どもたちの通学を支援しました。

被災者の登録

州政府と協力して、アチェ州の452,000人を対象に、被災者数や被災者の生活環境などに関する情報を収集しました。被災者の将来に対する希望などの情報を新たに収集するため、10月から登録の第二段階を開始しています。より包括的な被災者登録への協力を継続しています。この活動は日本の支援によって支えられています。

援助物資の輸送

12月末までに、アチェ州、北スマトラ州、ニアス島、シムルエ島各地への援助物資の輸送実績は80,000d以上に達する見込みです。国際機関、各国政府援助機関、NGOなど、100以上の団体にサービスを提供しました。

家族をなくしても新しい夢があります 

インドネシア・アチェ州
ビスケット作りに忙しいチュット
©Jonathan Perugia / IOM 2005
混雑したテントから引っ越して一ヵ月、ビジネス研修を受けて一週間で、チュット・マラハヤティ(21歳)には大きな夢ができました。

 「スマトラ島中で自分の作ったお菓子を売りたい。」

ビスケットの材料をかき混ぜながら、チュットは夢を語ります。

チュットたちのグループは、地元の市場にはすでにお菓子がたくさん売られているので、スーパーの方が売れるのではないかと考えました。出荷した36瓶は数日のうちに飛ぶように売れ、たくさんの追加注文を受けています。

聡明で英語を話すチュットは大学への進学を希望していました。しかし費用を賄えず、結婚するまで家事を手伝って過ごしました。

でも今はマーケティングとビジネスの知識を身に付けて、自分たちの製品を売り込む自信があります。チュットは熱く語ります。

 「役所でも売れるかも。事業を拡大したら宅配もやってみたい。」


日本国政府は、IOMのスマトラ沖地震・津波被災者支援プログラムに対し、災害発生直後に2,500万ドルを支援しました。同プログラム最大のドナーです。

IOMは、自衛隊やNGOなど、被災地で活動する日本の団体と協力して活動しています。

インドネシア 自衛隊・NGOとの協力

インドネシア・バンダアチェ
JICAが設置した緊急クリニックで
負傷者の手当をする自衛隊の看護師
©Jonathan Perugia / IOM / OnAsia 2005

陸上自衛隊のインドネシアにおける支援活動展開時(2005年1月〜3月)には、IOMは準備段階から密接な協力関係にありました。スマトラ島西岸の町で、UNICEFが中心となって実施したはしか予防接種キャンペーンに参加した際には、IOMは自衛隊やNGOと協力し、6,460人の子どもに予防接種を実施しました。患者の緊急移送や家族と離ればなれになっていた被災者のヘリコプターによる移送も、自衛隊と連携して行いました。

また2005年2月には、日本の民間企業と自治体から提供され、日本政府の手配で民間機と自衛隊機がリレー輸送した、ビスケット、ビニールシート、蚊帳などの援助物資をインドネシアで受け取り、自衛隊と協力して被災地に届けました。日本のNGO、ピース ウィンズ・ジャパンやAMDAにも配布を依頼しました。

これとは別に2005年1月から4月にかけて、ピース ウィンズ・ジャパンがジャパン・プラットフォーム他の支援で実施した事業で使用する物資や、AMDAが日本で調達した医薬品のインドネシア国内での輸送を担当しました。

スリランカ NGOとの共同事業 −新たに難民を助ける会と

アジア太平洋資料センター(PARC)と、ジャフナ県の3つの村における27,000ドルの事業実施契約を締結し、人身取引対策の一環として、84名の女性に対する生計手段の回復支援を実施しています。

また11月18日には、難民を助ける会と5,554,251スリランカ・ルピー(約647万円)の事業実施契約を締結しました。ゴール県で運動場とコミュニティセンターの建設、及び女性支援、教育、心のケアを通じた地域活性化のための活動を支援します。


左から 
インドネシア ピース ウィンズ・ジャパンへの物資輸送 ©IOM 2005
インドネシア AMDAへの物資輸送 ©IOM 2005
スリランカ PARCによる女性支援 ©IOM 2005
スリランカ 難民を助ける会との事業契約(提供:難民を助ける会)