■スマトラ沖地震及び津波被災者支援ニュースNo.20 2005年7月22日■

地震・津波から半年

IOMは、日本国政府などの資金提供を受け、インドネシアとスリランカの被災者に対する支援活動を、スマトラ沖地震・津波の発生後迅速に開始しました。この半年、援助物資の輸送・配布、仮設住居の提供、被災者の登録、人身取引(トラフィッキング)対策、医療支援 の分野で活動を継続しています。

被災者の中でも弱い立場にある子どもたちを始めとする、社会的弱者への支援を特に重視しています。

スリランカ 津波被災者の子どもたち
©IOM /Natalie Behring/OnAsia 2005.

インドネシアでの活動

スマトラ島北部(主にアチェ州)において活動を継続しています。昨年12月26日の地震と津波の直後は、緊急的な医療の提供や、食料や生活物資の配布などを中心として活動していましたが、その後は、仮設住居の建設や地域保健医療の再生など、被災地全体の復興再建を目指したより長期的な視野に立った支援に移行しています。人身取引対策、被災者の心のケアも併せて実施しています。

他のドナー国の追加支援を受けて、3月28日にスマトラ島西岸沖で発生した大地震にも対応し、ニアス島・シムルエ島でも市場の店舗の再建などの活動を行っています。


仮設住居の建設 ― 津波から半年のバンダアチェ ―


IOMインドネシア・バンダアチェ事務所 長嶺 義宣

津波が発生してちょうど6ヶ月となります。1月にバンダアチェ入りした時はまさに落花狼藉な場所でしたが、今は瓦礫が撤去され、避難生活を送っていた人々も徐々に帰還し始めています。市内では市場やレストランが賑わいを見せ、地方では田植えが一段落して苗が瑞々しく茂っています。露店には日々新しい野菜や果物が増え、色彩が豊かになっています。

Cot Payaでの仮設住居の建設
© Jacqueline Koch/IOM 2005.

津波被災者が元の生活を取り戻せるよう、約200の国際機関やNGOがアチェ州全域で復興活動を展開しています。50万人を超える人々が避難生活を送る中、早急な対策が必要な仮設・恒久住居に関しては、各援助機関が、アチェ州全体で合計約60,000軒の建設を目指して活動しています。IOMもその一つであり、現在インドネシア政府の要請と日本政府等の援助資金を得て、アチェ州各地で合計11,000軒の仮設住居の建設に力を注いでいます。

しかし、指定された土地に住居という「箱」を提供するだけで被害者が満足のいく生活環境が整う訳ではありません。まず生活を営む上で不可欠なのが電気・上下水道、交通設備、寺院、医療施設等ハード面の環境完備です。またソフト面として、周辺住民との良好な人間関係、コミュニティとしての団結、福祉サービス等の必要性が挙げられます。特にアチェの人々は教育熱心であり、近辺に学校が無ければ移住を拒む例も稀ではありません。テント暮らしの被災者に住居以外の必需品は何かという質問に対し、「子供たちの制服」という回答があったことが思い出されます。

IOMはコンクリートブロックを利用して仮設住居を組み立てていますが、同様の資材で学校や診療所を住宅地に建設しています。診療所内の設備はアメリケアというNGOが揃えていて、教科書や教員の準備はUNICEFが行っています。

人間が人間らしい生活を営むためには衣食住を超えた様々なニーズが存在し、それらを満たすためには包括的な取り組みが必要です。IOMも他の機関と連携しながら、バランスのとれたコミュニティの再生を目指します。

仮設住居の譲渡

6月30日、バンダアチェ近郊ティンカム村において、21世帯の被災者に、新たに完成した仮設住居を譲渡しました。

IOMは現在アチェ州各地で約700軒を建設中です。この事業を通じて約4,600人の雇用創出にも貢献しています。

被害状況調査

1) アチェ州
日本政府の支援により、IOMは政府の関係機関と協力して包括的な被害状況調査を実施し、6月末に報告を発表しました。
2,496の村で行った調査結果によれば、12月末と3月末の地震と津波により、約117,000棟が破壊され、うち70,000棟が全壊しました。市場などでは1,416店舗が破壊されました。

2) ニアス島・シムルエ島
約600ヵ村で、3月末の地震による被害状況とニーズ調査を実施しました。

スリランカでの活動

スリランカでは津波により、50万人以上の人々が家を失い、40万人が生計を立てる手段を失いました。IOMはスリランカ政府からの要請に基づき、災害前から設置されていた地域事務所を通じて、被災した13県で支援活動を行っています。災害発生から6ヶ月以上経過した現在は、仮設住宅の建設、生活必需品の提供、心のケア、医療支援、被災情報の登録などの活動を実施しています。

スリランカ・マータラ県庁
データセンターの設置について、県知事補と大統領府担当職員との会合。右端はIOM景山綾子©IOM 2005

被災者の登録
― データセンター設置に向けて ―


IOMスリランカ事務所 
登録・情報管理/防災事業担当
景山 綾子

私は、被災情報の登録とこれを一元的に取りまとめるデータセンターの設置事業を開始するため、スリランカ政府(大統領府)、モラトゥワ大学科学技術研究所、被災した県の知事ほかと折衝を重ねています。

スリランカにおける被災情報管理の現状

スリランカではもともと住民の情報等が中央政府や各県庁に統一した形で管理されておらず、また多くの情報は手書きで保存されているため、必要な時に電子的に検索できない状態です。被災直後は、各政府機関や援助機関が個別に情報収集し、正確なデータを把握しにくい状況にありました。政府は未曾有の大災害を経験した今、中央・地方政府が共有できる、被災情報の一括電子データシステムの設置を目指しており、IOMも技術支援をすることを決定し、具体的な支援のあり方を検討しているのです。

この事業は、被災情報を一元的に集約することで、効率的な情報収集と被災者への迅速で円滑な支援を行うことを目的にしており、中央政府も県も強い関心を寄せています。一方で、具体的な情報収集・共有の手法等、「各論」においては国レベルや地方レベルで要望や目的が異なり、なかなか合意に至れないのも現状です。この事業の開始に向けては、関係者の理解と協力を円満に得られるよう、IOMは日々模索を続けています。
IOMはイラクやアフガニスタンなどで避難民の登録事業を実施しており、それらの経験を基に、スリランカに馴染む手法を開発中です。最終的には他の自然災害等に迅速な対応がとれるようなデータベースが作られ、スリランカの人々の暮らしがより安定することを目指し、知恵を絞っています。


マータラ県での会合

「折衝を重ねている」と書きましたが、その一端をご紹介します。7月5日には、スリランカ最南部のマータラ県で、大統領府職員、県知事代理、IOM職員が今後の活動内容を決めるための会合に出席しました。朝6時50分、暗闇の中、首都コロンボを出発し、4時間の車の移動を経てマータラ県庁に到着しました。マータラ県はこの事業の有用性を認め、また実施の熱意を強く持っており、県庁設備内にデータセンター用のスペース、機材等を確保し、明日にでも事業を始められる状況にしてくれています。IOMスリランカ事務所は、中央政府と県との間の調整にも協力しています。

この会合では、6月に着任したばかりの私にも向けて、マータラの本事業への準備状況の説明が行われたほか、実施体制・方法を協議しました。この後、県庁の事業用スペースの下見、県の下部区画である区役所の訪問や区長との協議を行い、関係者の期待と今後の仕事の計画を土産に、午後9時ごろコロンボに戻りました。

区役所を訪問した際、被災者のデータを入力、管理している若手職員の仕事振りをみると、限られた機器で丁寧に仕事をしています。彼女・彼らの素質を生かし、さらに研修して能力を伸ばせば、長期的に地方行政体の強化に繋がる予感も得ました。現場で関係者と会い、状況や要望を把握しつつ、色々なアイディアを練ることが大切だ、と改めて実感しました。