■スマトラ沖地震及び津波被災者支援ニュースNo.22 2005年8月23日■

インドネシア IOMの事業実施地で
©IOM 2005 撮影:浜田祐子



IOMは、日本国政府などの資金提供を受け、インドネシアとスリランカの被災者に対する支援活動を、スマトラ沖地震・津波の発生後迅速に開始しました。以来、援助物資の輸送・配布、仮設住居の提供、被災者の登録、人身取引(トラフィッキング)対策、医療支援 の分野で活動を継続しています。

被災者の中でも弱い立場にある子どもたちを始めとする、社会的弱者への支援を特に重視しています。

女性たちの自立を目指して  − インドネシア 人身取引対策 −

IOMインドネシア・バンダアチェ事務所
浜田 祐子

私は、8月の第一週に、バンダアチェから約190km離れたビルン県ランチャン村で開催された、ビジネス研修を訪れました。この研修は、IOMが人身取引対策の中心的な活動として実施している、生計手段の回復支援の一環です。

IOMはこうした研修を4月から開始しており、9月まで実施する予定です。ナングロ・アチェ・ダルサラーム州(アチェ州)及び北スマトラ州の困難な生活を送る女性450人を支援するもので、技術トレーニングなどを通じて、彼女らの収入を回復することを目的としています。支援対象は、被災地に住む世帯主である女性、未亡人、18歳以上の未婚女性です。研修は政府機関との密接な協力のもとに実施されてます。

以前からの仕事を災害により失った女性に対しては、商工業省の主催により、会計や、より効率的で衛生的な魚の干物や塩作りについての研修を実施しました。IOMは、乾燥棚など、事業に必要な道具の提供もしています。小売業に従事する女性に対しては、仕入についての研修を実施しました。

もう一つのグループである、災害前にも仕事を持っていなかった女性に対しては、本人の興味や地域での需要に基づいて、農業省や商工業省などから講師を招聘して、職業訓練を行いました。IOMは、訓練を受けた全員に、ミシンやオーブンなど実技に必要な道具を提供しました。訓練中には、毎週参加者との話し合いが行われ、訓練の進捗の確認と同時に問題の解決が行われました。
インドネシア
女性のためのビジネス研修のようす
©IOM 2005 撮影:浜田祐子

生計手段の回復支援の目的は、対象女性が人身売買の被害に遭わないように、経済力を付けることです。女性たちは自分の仕事を持つことで独立心が高まるだけでなく、活動自体が心のケアの役割を果たします。他の参加者と知り合い、自分の事業が成長することで、自身の存在意義を確かめることができるのです。事業起ち上げに忙しく過ごすことで、トラウマからの立ち直りを早くします。またIOMは、研修を通じて、直接人身取引の危険についての情報も提供しています。

IOMは活動対象地を広げ、対象者を600人に増やすことを検討しています。

Aさんは、以前から塩作りをしていた数人の女性と協力して事業を再開しました。家族は全員無事でしたが、津波により商売道具や、保管してあった塩2dが流されました。IOMは、Aさんの塩作りと塩の保管用の小屋の修理費用を支援しています。
インドネシア Aさんの塩作り
左はIOM職員浜田祐子 ©IOM 2005
できあがった塩
©IOM 2005 撮影:浜田祐子

インドネシア 再開した店を切り盛りするBさん
©IOM 2005 撮影:浜田祐子

Bさんは海岸から100bのところに、麺料理を出す小さな店を再開しました。漁業で生計を立てている人々が主な顧客です。

まだ災害のときの経験を口にできるほど心の傷が癒えていませんが、店を再開できて、IOMに感謝してくれています。参加型の研修での他の女性との意見交換が、商売に役に立っていると言います。Bさんは、揚げバナナやスナックも売るために店を増築しました。

◆ IOMの子ども支援にインドネシア政府より感謝状 ◆

インドネシア 感謝状を受け取るIOM代表
©IOM 2005

IOMジャカルタ事務所の人身取引対策プログラム・コーディネーター、クリスティン・デイディは、8月8日、インドネシア社会省バチアール・チャムシャ大臣より感謝状を受け取りました。昨年12月の災害以後、IOMがアチェの子どもたちのために行った人身取引対策などの活動に対するものです。アチェ州知事邸において開催された、「アチェの子どもたちから世界へありがとう」と題されたセレモニーで表彰されました。

IOMはこの機会に、1,000足の靴を寄贈しました。

IOMインドネシアでの活動

スマトラ島北部(主にアチェ州)において活動を継続しています。昨年12月26日の地震と津波の直後は、緊急的な医療の提供や、食料や生活物資の配布などを中心として活動していましたが、その後は、仮設住居の建設や地域保健医療の再生など、被災地全体の復興再建を目指したより長期的な視野に立った支援に移行しています。人身取引対策、被災者の心のケアも併せて実施しています。

他のドナー国の追加支援を受けて、3月28日にスマトラ島西岸沖で発生した大地震にも対応し、ニアス島・シムルエ島でも市場の店舗の再建などの活動を行っています。


仮設住居3,161軒が完成  − スリランカ −

IOMは、日本政府ほかの支援を受けて、7つの県で仮設住居の建設を行っています。8月15日までに、3,161軒が完成しました。

IOMの仮設住居は2年から4年の使用に耐えるもので、一家族18平方b以上のスペースが確保されており、恒常的に使用する住居が完成するまで被災者が暮らします。IOMは可能な限り被災者の土地に仮設住居を建設し、被災者が元のコミュニティに戻れるように配慮しています。

しかし将来の津波に備えて、スリランカ政府は海岸から100〜200b以内の場所での建設を禁止しており、そういった場所の住民に対しては、政府が指定した場所に集合住居を建設しています。

IOMはまた、仮設住居の建設地にコミュニティ・スペースや、幼稚園、遊び場など子どもたちのための施設、保健センターなどの公共施設も建設しています。トイレやシャワーなどの衛生設備も、他の援助機関と協力して設置しています。

これからは安心して暮らせます − IOM仮設住居への入居者の声 −

巨大な黒い波が私を襲ってきたときは、この世の終わりだと思いました。最近IOMが建設した仮設住居に入居したバララクスミーさんは、津波を思い出して語ります。津波は彼女の68歳の母親を奪い、彼女の家を瓦礫にしました。

「今はキャンプを出て自分の土地に戻って来ました。人生において、二度目のチャンスをもらったようです。」

スリランカ アンパラ県
IOMが建設した仮設住居で勉強するカマラササン君 ©IOM 2005

「キャンプでの生活は大変でした。とても暑くてきゅうくつで、プライバシーが全くなかったのです。今は静かに勉強ができるスペースがあります。これからは安心して暮らせます。」

バララクスミーさんの20歳の息子のカマラササン君は、本を広げた机から顔を上げてこう言いました。

また、近くの仮設住居に住むスベンドラさん(37歳)は、津波を思い出してこう語ります。

「田んぼで作業をしていたときに波がうちを襲ったんだ。ココナッツの木位の高さの波で、お腹が大きかった妻はまず生き残れないと思ったよ。」

彼の家は破壊されましたが、彼の妻は波を逃れ、今は6カ月の女の子と2歳の子どもを抱えています。

「妻がきゅうくつなキャンプで出産したときには、非常に心配でした。上の子どもはキャンプのひどい暑さで、食欲がなくなり、話もしませんでした。でも、新しい家は木陰に囲まれて心地よく、近所の人たちも引っ越して来て、子どもたちはまた前のように遊んでいます。」
スリランカ アンパラ県
キャンプからIOMが建設した仮設住居に移って新しい生活を始めたスベンドラさん一家 ©IOM 2005

スベンドラさんもバララクスミーさんも、津波の恐怖を忘れることはできないと言います。しかし、IOMの支援により、12月の悲劇との決別のための第一歩を踏み出せたと語ってくれました。

IOMスリランカでの活動

スリランカでは津波により、50万人以上の人々が家を失い、40万人が生計を立てる手段を失いました。IOMはスリランカ政府からの要請に基づき、災害前から設置されていた地域事務所を通じて、被災した13県で支援活動を行っています。

災害発生から6ヶ月以上経過した現在は、仮設住宅の建設、生活必需品の提供、心のケア、医療支援、被災情報の登録などの活動を実施しています。