■スマトラ沖地震及び津波被災者支援ニュースNo.25 2005年11月4日■

IOMは、日本国政府などの資金提供を受け、インドネシアとスリランカの被災者に対する支援活動を、スマトラ沖地震・津波の発生後迅速に開始しました。以来、援助物資の輸送・配布、仮設住居の提供、被災者の登録、人身取引(トラフィッキング)対策、医療支援 の分野で活動を継続しています。

被災者の中でも弱い立場にある子どもたちを始めとする、社会的弱者への支援を特に重視しています。

インドネシア・アチェにおける医療支援 −ムラボー事務所の活動

インドネシア・アチェ州
IOMが建設した診療所の開所式
地元の子どもたちが伝統的なダンスで歓迎
©IOM 2005



IOMインドネシア・ムラボー事務所
インターン 片岡 未希

私は、インターンとして今年の8月後半からインドネシアのアチェで、IOMの活動に参加しています。

今年4月から7月にかけては、私はNGOのボランティア看護師としてアチェの西海岸で保健医療の援助活動をしていました。日本では保健婦として患者さんの家庭を訪問したり、医療や介護サービスに関する仕事をしたりといった経験があります。アチェでのボランティア活動を通して、もともと持っていた海外で地域保健の向上に関わりたい気持ちを再認識しました。そんなときにバンダアチェで出会ったIOM職員から、同じく西海岸のムラボーで地域保健の再建、向上を目指した長期的なプロジェクトが始まる話を聞き、強い興味を持ち、こうしてその新しいプロジェクトに関っています。忙しい日々が続いていますが、充実した毎日を過ごしています。

IOMムラボー事務所は、生計手段の回復支援プログラム開始と共に、2004年7月に開設されました。漁業、米作が主だった地域に、ココナッツ・落花生の栽培、パーム植林、ココナッツ油採取などの他の農業技術を導入して、地域の人々の収入を増やすことが目的でした。しかし、地震・津波で大きな被害を受けた後に行った調査によって、数多くの人々が住居を失い、テント、または臨時の住居での生活を強いられ、医療の環境も充分でない現状が明らかとなりました。そこで、IOMは医療・保健システムの改善を目的としたプログラムをスタートすることにしました。現在、ムラボー事務所が実施する医療支援には、診療所の建設、既存の地域保健センターの再建、そこに勤務する地元スタッフへのトレーニングなどがあります。

診療所の建設

今年の3〜4月にかけて、IOMが行ったアチェバラット、ナガンラヤ両県での調査の結果、地震・津波によって家屋を失ったり、紛争から逃れるために避難したりした数多くの人々が、仮設住居に住んでいることがわかりました。そして、もともと紛争地域内、もしくは紛争地から近いために、保健医療サービスがきちんと行き渡っていない地域がかなりあるうえに災害が重なり、緊急に地域の人々に医療サービスの提供が必要なことが明らかになりました。

地方政府の要請を受け、IOMは2年程度の運営期間を目途にした、臨時の診療所をアチェバラット県に5カ所、ナガンラヤに2カ所建設することにしました。7〜8月に建設を始め、途中様々な困難を乗り越えながら、10月中旬に7カ所全ての建設工事を終えることができました。
インドネシア・アチェ州
IOMが実施したのトレーニングに参加した
助産婦に修了証を渡す筆者 ©IOM 2005

そして、10月19日、そのうちの1つであるAlue Penyaring 診療所 で開所式が行われました。セレモニーには、県・地方政府の役人の他、ドナーであるAmeriCares、 OPUSAの代表、地元の人々が集まって無事にオープニングを迎えた喜びを共有しました。建設の様子を紹介する写真展や、地元の少女たちによるアチェの民芸舞踏でセレモニーは大いに盛り上がりました。

医療施設へバイクを供与

10月18日には、ナガンラヤ県保健局に中国の支援で18台のバイクを寄贈しました。先月寄贈した11台に引き続くものです。IOMが建設した診療所を含めた医療機関職員などが、県内に点在する公立診療所を巡回する際や、重症患者の移送時に使用されます。

都市から離れた山岳地域の多くは、バスなどの公共の交通機関が十分ではないために、住民が医療サービスを受けることが困難な状況です。地方保健局から遠隔地における交通手段の改善についての要請を受け、IOMは実状調査を行いました。調査によれば、山中の村々では最も近い医療施設までの距離が5km以上で、徒歩、または台車で病人を運ぶしかない地域がありました。バイクの寄贈によって、こういった地域の人が医療サービスへアクセスしやすくなると思われます。IOMは、常に地方政府との調整を行いながら、必要とされている援助を積極的に進めています。

IOMインドネシアでの活動

スマトラ島北部(主にアチェ州)において活動を継続しています。昨年12月26日の地震と津波の直後は、緊急的な医療の提供や、食料や生活物資の配布などを中心として活動していましたが、その後は、仮設住居の建設や地域保健医療の再生など、被災地全体の復興再建を目指したより長期的な視野に立った支援に移行しています。人身取引対策、被災者の心のケアも併せて実施しています。

他のドナー国の追加支援を受けて、3月28日にスマトラ島西岸沖で発生した大地震にも対応し、ニアス島・シムルエ島でも市場の店舗の再建などの活動を行っています。



スリランカにおける活動

人身取引対策の一環で若者向けの
ワークショップを開催 ©IOM 2005

人身取引対策
若者向けのワークショップ開催

IOMは10月12日、日本の支援で実施している人身取引対策の一環として、バティカロア県で若者向けのワークショップを開催しました。学生などの150人の参加者が会場をいっぱいに埋め尽くしました。参加者は、人身取引の危険を始め、安全な移住、職業訓練、HIVエイズについて学びました。

アンパラ県やトリンコマリー県などでも、同様のワークショップを10月10日から15日にかけて開催しました。合計760人以上の参加がありました。参加者はIOMが建設した仮設住居に住む16〜23歳の若者で、ほとんどが就学も就職もしていません。就職ガイダンスや人身取引の危険の説明などが行われました。また、HIVエイズについての情報が記載されているトランプが配布されました。

感染症の予防


デング熱やマラリアが発生する地域が増えているのを受けて、IOMは予防キャンペーンを実施しています。
スリランカ・トリンコマリー県
水ぼうそう予防接種 ©IOM 2005

トリンコマリー県ではIOMが協力して、県の保健当局が地域のテレビ局を通じて予防のメッセージを流す予定です。また同県のKalladyにおいて、12歳以下の子ども200人に対する水ぼうそうの予防接種を実施しました。これは、9月に被災者キャンプで水ぼうそうが流行したことに対応したものです。戸別訪問や地域のリーダーとの会合を実施するなど、地域の人々と協力して予防活動を行っています。
バティカロア県では、デング熱やマラリアを媒介する蚊が生息する水たまりなどの場所をなくすための、情報キャンペーンを実施しています。同県の仮設住居の建設地において防疫のための清掃活動が行われましたが、これにもIOM職員が住人とともに参加しました。

仮設住居4,000軒を超す
スリランカ・カルタラ県
IOMの建設した仮設住居で暮らす子どもたち
©IOM 2005. Photo by Takuya Ono

IOMは10月前半、アンパラ県、バティカロア県、トリンコマリー県において、233軒を完成させました。さらに5,755軒の建設を予定しています。IOMは7つの県で、これまでに4,188軒の仮設住居を建設しました。

IOMは建設だけでなく、カルタラ県やアンパラ県の仮設住居サイトほかで、井戸の補修、ポンプ、貯水槽の設置などを通じて、水の供給の改善に努めています。また、トイレの設置も行っています。
カルタラ県
仮設住居に入居して笑顔の家族
©IOM 2005. Photo by Takuya Ono

カルタラ県
日本の支援によりIOMが建設した仮設住居
©IOM 2005. Photo by Takuya Ono
コロンボ県
仮設住居(正面)とコミュニティセンター(右端)©IOM 2005

IOMスリランカでの活動

スリランカでは津波により、50万人以上の人々が家を失い、40万人が生計を立てる手段を失いました。IOMはスリランカ政府からの要請に基づき、災害前から設置されていた地域事務所を通じて、被災した13県で支援活動を行っています。現在は、仮設住宅の建設、生活必需品の提供、心のケア、医療支援、被災情報の登録などの活動を実施しています。