■パキスタン地震被災者支援ニュースVol.1 2005年11月16日■

厳しい冬が間近に迫る山岳地帯での支援を急いでいます

パキスタン・バグ県
インドとの停戦ライン近い山間のアベリにテントを輸送
©Warrick Page / IOM 2005


7万人以上の命と330万人以上の家を奪った地震から1カ月が経ちました。IOMはパキスタンにおいて、緊急シェルターの提供、援助物資の輸送、医療の3つを柱とした支援を災害直後より継続しています。

このうち日本からの100万米ドルの支援を受け、援助物資の輸送、被災者の移送、負傷者の緊急移送を実施しています。また、被災した女性や子どもたちが犠牲にならないように、人身取引の危険を訴えるキャンペーンなどを実施する予定です。

緊急シェルター

冬に備えてテントと建設・修理キットを配布

国際社会の支援により、これまでに132,000張のテントがパキスタンに届けられました。パキスタン政府もこれとは別に、241,000張を配布しています。全体で50万張のテントが必要と推定されていますが、発注済みや現在輸送中のテントで、不足している127,000張がようやくまかなえる見込みです。

しかし、テントが厳しい冬に耐えうる仕様で、本格的な冬がやってくる前に届いて初めて被災者を救うことがきます。そのため、降雪のある山岳地帯の村々で、被災者自身が簡易避難所を建設したり、家を修理したりするための道具と材料の配布も、併行して行っています。同時に、学校や診療所、モスクなどとして利用可能な大きいサイズの共用テントも必要とされています。

残りのテントが届くのに時間がかかること、すでに配布されたテントが必ずしも冬用ではないことから、現在の目標は、冬を越すために、一世帯に一部屋の暖かい避難場所を提供することです。
パキスタン・ムザファラバード
入院患者が廊下にあふれる病院にテントを提供し
環境を改善 ©IOM 2005

冬を目前にした今後のシェルター支援

IOMは、国際機関やNGOなど60の援助団体による緊急シェルター支援の調整を担当しています。山岳地帯は、一旦雪に閉ざされると4月までアクセスができなくなります。すでに雪が降り始めている地域もあり、限られた時間と資材で適切な支援を行うためには、現場レベルでの連携が重要です。各援助機関と政府との協力で、被災地の詳しい情報が集まりつつあります。11月中に降雪の予想される山岳地帯の住民最大20万人に対して、緊急性が高い順に以下の対策が必要です。
  • 標高の高い地域の住民への建設・修理セット配布
  • 交通が寸断された谷の住民への建設・修理セット配布
  • 中程度もしくは低い標高の地域での、一世帯につきテント1張の配布の継続
  • 断熱材、暖かい衣服、毛布の配布
  • 既に配布された冬用ではないテントの冬仕様への転換

建設・修理道具と材料の配布を急ぐ

山間の村々では、家財や土地を守るために、多くの被災者が標高の低いところに避難をせずに冬を越そうとしています。そういった村々に、簡易避難所の建設や家の残った部分を修理するための道具や材料のセットを配布する支援を急いでいます。セットには、金づちなどの道具の他、屋根用トタン板、ビニールシート、針金、釘、断熱材などが含まれます。
IOMは、国際赤十字赤新月社連盟(IFRC)、英国のNGOイスラミック・リリーフ、国連と協力し、降雪地帯に住む10,000世帯70,000人を対象にセットを配布します。

パキスタン・ニーラム谷
道具と資材を空輸し村人と簡易避難所を建てる
©Matt George / IOM 2005

交通の寸断された山岳地帯へ資材を輸送するには相当の困難が伴います。パキスタン軍や各国軍からも協力を受けて、調査チームがヘリコプターで孤立した村々に出向いて被害状況を調査して衛星電話でムザファラバードの基地に連絡し、必要な物資をヘリコプターで輸送します。修理の技術的な助言も行い、高齢者、女性が家計を支える世帯、小さい子どものいる家庭を優先的に支援します。

IOMは11月8日、ムザファラバード近くのニーラム谷の7ヵ村に、350トンの資材を空輸しました。これにより、350棟の避難所の建設が可能となります。その後も建設資材の輸送を続けています。

しかし、11月に計画されている緊急シェルター支援活動は、全体で455万ドルの資金不足に直面しており、IOMを始めとした援助機関は、国際社会に緊急に支援を呼びかけています。

自衛隊・日本のNGOとの協力

パキスタン
遠隔地に日本からの援助物資を空輸
©IOM 2005
パキスタン
アライ谷に自衛隊と協力して
援助物資を届ける ©IOM 2005
IOMは10月21日から、自衛隊との連携で援助物資の被災地への配布を開始しました。IOMは、日本政府から寄贈されたテントや毛布などの9トンの援助物資を、自衛隊との協力で、主にアライ谷で配布しました。

日本のNGO、JENにもトラック10台分の輸送サービスを提供しました。その他の日本のNGOとの協力も予定しています。

人身取引対策

災害後に危険が高まります

災害は、多くの人々から家と生計を立てる手段を奪います。特に社会的に弱い立場にある女性や子どもは、家族を失うなどして生活苦に陥り、人身取引のブローカーの甘言にのって被害に遭う危険が高まります。災害の後早い段階で行う人身取引対策の有効性は、スマトラ沖地震の被害を受けたインドネシアやスリランカにおけるIOMの活動で実証されています。IOMはパキスタンにおいても、人身取引対策を実施する予定です。

自然災害と人身取引の関係についてはより詳細な調査を行う必要があるものの、緊急救援活動に重点が置かれる災害直後には、危険は少ないと考えられています。人々が生活面の被害の程度を認識するにつれ、人身取引の危険は増加します。また人身取引のブローカーは時間がたつにつれてより組織化されていきます。

対策はまず、危険の高いグループと場所を特定することから始めます。この段階では、一般の人々に安易に警告メッセージを広めないようにすることが重要です。警告を発することで新しい噂が生まれることや、既に流布している噂を助長することを防ぎます。ただし、具体的な人身取引の事例が報告された場合には必ず追跡調査を実施します。経験豊富なIOM専門家のもとで、地元のNGOなどと協力して調査を行います。

パキスタン・バタグラム県
山間のアライで支援を待つ子どもたち
©IOM 2005. Photo by Yuko Hamada

調査後は、次のような活動を実施する予定です。
  • 地元の協力団体の選定と、コミュニティーや宗教上の 指導者への協力の呼びかけ
  • 孤児の登録の確認と、必要に応じた支援
  • 印刷物やラジオなどを使った予防キャンペーン
  • 法執行機関やその他の政府職員に対するトレーニング
  • 生計手段の回復支援を実施する際に、人身取引に対する危険性の高さを受益者の選択基準に加える

このような活動を通じて、女性や子どもが人身取引の被害者になる危険を早期に減らします。

患者の移送

IOMは被災地にある診療所などでは治療できない、深刻な状態の患者とその家族を、ムザファラバードやイスラマバードなどの病院に移送する支援を行っています。

自衛隊のヘリコプターの協力も受け、これまでに320人の患者を移送しました。
パキスタン
遠隔地アライからイスラマバードに
患者とその家族を移送 ©IOM 2005

活動資金の状況

IOMは、パキスタンにおける6カ月の活動全体のために、6,050万ドルの支援を求めています。これまでに日本を始め、国連開発計画、カナダ、アイルランド、イギリス、アメリカから800万ドルと、各国から物資による支援がありました。IOMは引き続き時間との戦いの中で、国際社会に支援を呼びかけています。