国際移住機関(IOM)
プレス・ブリーフィング・ノート日本語版 2011年12月18日

国際移民の日−移民に適切な保健サービスへアクセスする権利を

ケニア 児童保健キャンペーンの一環で活動に当たるIOM医療スタッフ
©IOM 2009 - MKE0258 (Photo: R. Ogola)

IOMは12月18日の国際移民の日を機に、「多くの国で移民は保健サービスに適切にアクセスできずにいるが、これはますます人の移動に依存している現代にあって、公衆衛生上憂うべき事態である」と訴えている。

世界に移民は10億人以上いるが、2億1,400万人は国境を越えた移民。世界中の全ての国が移民がもたらす労働力や技術、知識、または移民による送金-2011年は4,040億ドル-のいずれかに依存している。

他方で、保健分野において地球規模で取り組むべき課題の一つが移住といえる。移民は保健サービスへのアクセスが容易でないが、言語や文化の違い、手頃な費用で受けられる保健サービスや保険がないこと、手続き的な障害、在留資格、しばしば極端な長時間勤務や時間外労働をしていることなどが影響している。

不正規移民は、暴力や搾取、貧しい生活環境、危険な労働などにさらされるリスクが高く、最も弱い立場にある移民と言える。退去強制を恐れて、緊急時か既に遅すぎる状況でしか医療措置を受けない。

「各国政府は自国の困難な状況にあるコミュニティでの保健の不公平に対処しようとしていますが、その際移民も対象に含める必要があります。移民は不幸にも、今日の社会で最も差別され、弱い立場に置かれていて、地球規模の保健を語る上でもほとんど議題に上がりません。」とウィリアム・レイシー・スウィングIOM事務局長は言う。

現状、不正規を含めた全ての移民に保健サービスへのアクセスを提供している国は非常に限られている。例としては、アルゼンチン、ブラジル、フランス、ポルトガル、スペインなどがある。

近年、重症急性呼吸器症候群(SARS)や鳥インフルエンザ、結核などの再流行といった保健分野での危機があり、保健システムに移民を含める必要性が明らかであるにも関わらず、世界規模での対応はなかなか進んでいない。

移民の保健についての議論で数少ない明るい前進には、世界保健機関(WHO)の加盟国に移民の保健を促進させることを目的とした2008年の世界保健総会決議61.17号、EU域内における保健の不平等の是正を目的とした2011年3月の欧州議会決議や、移民の出身国であるアジア諸国が自国民の移住先の国々に移民を考慮した保健政策を求めた今年4月のダッカ宣言などがある。

「こうした前進とともに重要なのは、宣言や決議が具体的な行動に結びつくことです。そして、全ての人々に等しく保健サービスへのアクセスを提供する国が増えることです。そうすることで、人道的、経済的、社会的な道理が成り立つでしょう。」とスウィング事務局長は続ける。

IOMは、不正規移民が緊急的な医療措置しか受けられない状況は、健全な公衆衛生の原則から外れているとしている。そうした制限は個々人の健康に悪影響をもたらすだけでなく、特に感染症の場合には公衆衛生上のリスクを増大させる。また、移民が予防的な保健サービス、プライマリー・ヘルス・ケアを受けられる場合よりも、究極的にはコストが高くつく。

移住は政治的にも社会的にもセンシティブな問題とされるが、多くの政府は移民は自国の経済に必要不可欠だと認識している。しかしIOMは、何よりもまず移民は人間であって、経済的な価値のある代替可能な商品とみなされるべきではないと訴えている。

「移民は社会や経済の発展に貢献し続けています。保健サービスや政策から移民を排除していては、保健に関する人権を否定するだけでなく、移民が社会的サービスの負担であるという人々の誤った懸念や認識を助長することにもなります。今は各国が大胆に行動を起こし、全ての人々が健康である権利を擁護すべき時です。」とスウィング事務局長は述べた。

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