 発表された2015年版世界移住報告書
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IOMは10月27日、ジュネーブで開催されていた移住と都市に関するハイレベル討議の会期中に、『2015年版世界移住報告書(World Migration Report)- 移民と都市』を発表した。
これはIOMの世界移住報告書シリーズの8冊目で、移住と移民がどのように都市を形作っているか、また逆に都市や都市の住民・組織・ルールはどのように移民の生活に影響を与えているかに注目している。
発表の席で、ジュン・リー首席編集員は、移住の動向や政策に関する最近の国際的な議論は国レベルだが、この報告書は移住に関する議論を都市レベルに移した、と述べた。
「この報告書は、移住が都市をどのように形成しているか、移民がどのように生活し、働き、住まいはどのようなところかなど、都市において移民がどのような状況に置かれているか、に着目し、人の移動と都市開発の密接な関係を明らかにしようとしています。」とも述べた。
報告書は、移民の5人に1人は、世界で最も大きい20都市に生活しており、こうした都市の多くでは、人口の3割かそれ以上が移民である、としている。
また報告書によれば、2014年、地球上の人口の54%以上は都市部に住んでおり、現在の都市部人口39億人は、2050年までに64億人に膨らむと見られている。
現在の都市と移住に関する議論は、北半球と国境を越えた移民の社会統合に焦点を当てがちだが、この報告書は南半球の都市の移民の状況にも注意をしている。結果として、世界移住報告シリーズとして初めて、国境を越える移住と国内の移住の両方を扱っている。
報告書は、人の移動は増加しており、圧倒的に都市部への移動が続くだろう、と述べている。「同時に、移住の流れの地域分布は、グローバル経済の変化に合わせて変わってきています。例えば、東アジアやブラジル、南アフリカ、インド西部など、経済成長率の高い国の都市に行きたいと考える移民が増えています。」とリー編集員は言う。
南南移住、つまり中低所得国間の人口移動が増えていることから、途上国の都市では入ってくる移民、出て行く移民の双方が存在する。
また、都市への移住の増加は、移民とコミュニティ、そして政府にリスクと機会の両方をもたらす。超多様性は、特定の民族や国籍、社会経済的ステータスの人々が近隣に固まって、居住地が分離するなどの課題をもたらす。民族的に固まることはときによい面もあるが、政策決定者たちは居住地の分離の解消に努めようとしている。
他民族構成は途上国の多くの都市にとって普通のことで、そうした都市は、国内避難民や移動途中で立ち往生している移民が多く、混合移住に直面している。
多くの都市で資源は不足しているが、当事者として関わりたいとの意思があることから、報告書は、各国での都市部のガバナンスにおける良い政策と実務のため、知見とキャパシティ、コミットメントのバランスをどのように取るかを議論する、移住と都市化のプラットフォームの必要性を提言している。
「先進国でのグッドプラクティスが全ての国には当てはまらないことに留意しながら、国際社会や組織がどのような役割を果たすのか考えていかなければならない。」とリー編集員は語った。 |