![]() |
IOMがこの程発表した「グローバルな移住の傾向 - 2015年概観 (Global Migration Trends Factsheet 2015)」には、さまざまな統計資料を基にした2015年における移住の世界的な傾向の概況が紹介されている。
2015年には、国境を越えた移民の数は世界で2億4,400万人で、2013年の2億3,200万人より増加した。 国境を越えた移民の世界の人口に対する割合は3%程度で、ここ数十年一定。 |
国境を越えた移民のうち女性は、世界では48%、アジアでは42%に過ぎないが、欧州(52.4%)や北米(51.2%)では、過半数を超えている。 |
南南移住の流れ(途上国間)は、南北への移動(途上国から先進国へ)に比べ増加している。2015年には、途上国で生まれた9,020万人の移民がいわゆる他の「南」の国に住み、途上国で生まれた8,530万人が「北」の国に住んでいた。 ドイツは米国に続き、移民を絶対数として2番目に多く受け入れていた。2015年には、1,200万人の外国生まれの人が国内に居住していた。米国では4,660万人で、ロシア連邦がドイツに続く1,190万人。 移民の受け入れ国の人口に対する割合としては、湾岸協力理事国諸国(サウジアラビア、アラブ首長国連邦、バーレーン、オマーン、カタール、クウェート)が引き続き高い。アラブ首長国連邦では外国生まれの人口が総人口の88.4%、カタールでは75.7%、クウェートでは73.6%に達する. IOMの『2015年版世界移住報告書』によれば、ほぼ5人に1人の移民が、世界の20大都市に居住している。シドニーやオークランド、シンガポール、ロンドンでは、移民が人口の3分の1以上を占める。アムステルダム、フランクフルト、パリでは、少なくとも4人に1人の住人が外国生まれ。 |
2015年は、第二次大戦以来、非自発的移住が最も多く記録された。アフリカから中東、南アジアなど世界各地で難民や庇護申請者が劇的に増加したことによる。 2015年中盤までに世界各地で1,510万人の難民が受け入れられていた。これは、3年半前と比べると45%の増加で、主に5年目に突入したシリアで続く内戦を要因とする。2015年前半だけで、500万人の人が新たに避難生活を余儀なくされた。 2015年ドイツはまた、年末までに442,000人の申請者が国内に滞在しており、新規の庇護申請者を一番多く受け入れた国となった。 世界での庇護申請数は、2014年と2015年前期の間でほぼ倍増した。2014年末に558,000件が申請中であったが、2015年6月にはほぼ100万件になった。 2015年末までに、欧州連合(EU)全体で120万件以上の新規の庇護申請があったが、これは2014年に記録された563,000件の倍以上。1992年に当時の加盟国19カ国で記録された672,000件のほぼ2倍。2015年の増加は主に、シリア、アフガニスタン、イラクの出身者からの申請が多かったことによる。 EUでの新規庇護申請者のほぼ3人に1人は未成年で、2014年と比べて11%の増加。各国政府関係機関によれば、そのうちほぼ5人に1人は保護者がいないとみられ、2008年以来最高で、2014年の3倍。 しかし、難民の大多数は未だ、特に難民の出身国に近い途上国に受け入れられている。例えば、大半のシリア難民は2015年12月現在、トルコ(220万人)、レバノン(120万人)、ヨルダン(63万人)が受け入れている。 また、多くの非自発的移住は国境内で発生していて、2014年末には推計3,800万人がイラク、南スーダン、シリア、コンゴ民主共和国、ナイジェリアなどで国内避難民となっている。 |
2015年は移民が最も多く亡くなった年で、非自発的移住が世界的に増加し、国境を越えようする際に、命を落としたり、行方不明になったりする移民の数が同時に記録的に増加した。2015年、世界各地で5,400人以上の移民が命を落としたか行方不明になった。 IOMの"Missing Migrant Project"によれば、欧州へ向かう途中で命を落とした移民の死者数は少なくとも3,770人で、前年に比べて15%増加した。 2014年から2015年にかけて、欧州への海路を通じた非正規の移住ルートに突然大きな変化が起こった。2014年にギリシャに到着した移民は34,400人だったが、2015年には853,000人になった。2014年にイタリアに到着した移民は170,100人だったが、2015年には154,000人だった。 |
2015年には、EU諸国からの自主的帰還数(庇護申請が認められなかった者など)は、初めて強制的な帰還より多かった(81,681人に対して72,473人)。IOMが支援した、EU加盟国、ノルウェー、スイスから自発的帰還者数は、2015年にはほぼ56,000人となった。 |
世界の移住労働者数の新しい推計によれば、世界の国境を越える移民のうち大多数は移住労働者。移民は非移民よりも、労働市場への参加率が高い。特に女性移民が、非移民の女性に比べて労働市場への参加割合が高いことによる。 |
送金は世界中で増えているが、送金コストは依然として比較的高いまま留まっている。移民が母国に送金した総額は、2015年には6,010億ドル、途上国への送金総額の3分の2以上と推計されている。 タジキスタンでは、送金はGDPの40%を超えている。しかし、平均的な送金コストは、2015年第三四半期に、未だ送金総額の7.5%で、2030年までの持続可能な開発目標(SDGs)で掲げられた3%より高い。送金コストは平均9.5%と、特にサブ・サハラアフリカで高い。 |
最後に、IOMがギャラップ社と共同で発行した報告書「世界は移住をどう見るのか – How the World Views Migration」によれば、欧州での明らかな例外を除いて、一般に捉えられているよりも、世論は移住を好ましいものと見ている。この報告書は、ギャラップ社が2012年から2014年にかけて140カ国で実施した世論調査に基づくもの。 |
移住に関する更なるデータについては、報告書本文をご覧ください グローバルな移住の傾向 - 2015年概況(英文PDF) ![]() 報告書の詳細に関するお問い合わせは IOMグローバル移住データ分析センター(Global Migration Data Analysis Centre -GMDAC)(ドイツ・ベルリン)まで |